8月11日〜12日

8月11日
6:30起床〜9:20バスストップ〜10:20登攀開始〜18:30取り付き
朝カリービレッジに移動し、昨日購入した食料などを回収しようとフードボックスを開けた。すると………無い!食料を全て入れた袋が無くなっている。……パクられた。占めて二万円相当が盗まれた。不覚…。食料袋だけカギのかけたボックスに移すか、このボックスにもカギをつけるべきであった。水9ガロンと便所セットは盗まれていなかった。まぁ、こんなモン盗むやつはいないか。この状況を目の当たりにし、怒りと後悔と焦りの入り混じった気持ちになる。とにかく何とかしなければ!と、朝8時に開店したマウンテンショップで再び食料を買いなおす。エルキャプタンの近くまで行くシャトルバスは9:00からビジターセンター前から出るので、そこに移動。途中ザックの中の水タンクが破損し、ビチャビチャと水が漏れ出る。最悪……。ビレッジストアーで、クリフバー40本と水1ガロン買い足し、パッキング。ホールバックとひでさんザックに荷物を分けたが、ホールバックの重さは30キロ以上あり、一度下ろすと上げるのが大変だ。何とか準備し、バスを待ちながら朝飯。一人の外人クライマーが話しかけてきた。3月から10月までヨセミテにいるのだと言う。どこに泊まっているのだと聞くと、caveと答えていた。洞窟なんてどこにあるんだ?なんか靭帯をケガしたことがあるらしく、中指の第一関節が常に曲がっていた。サラテを登りに行くと言うと「oh! cool! Good!」と応援してくれた。行ってくるぜ!エルキャプタンメドウに着き、アウローチ。途中盗まれた食料袋には2人のシュラフカバーが入っていたことに気づく。……もう考えないようにしよう。取り付きに着くとなんと日本人クライマー二人組みがサラテの偵察に来ていた。社会人で時間が限られているので、明日ハートレッジに着くことができなければ予定が全て狂うらしい。準備をしていると、今度はイタリア人家族がやってきて、色々話しかけてきた。父親がユマールやカムを手に取り家族に説明している。見世物じゃねーぞコラ。その後地面で僕らの登りを眺めていた。
1P目:高橋。5.7〜10cのフィンガーへ。荷物が上がるかどうか心配だったが、壁がすっきりしていてレギュラー程傾斜も緩くなかったので、荷揚げはそこまでつらくなさそうだ。全部で40キロちょいかな。
2P目:高橋。上のハング下まで、途中のフィストサイズのクラックからは冷たい風が出てくる。なんか怖いな。荷揚げも順調。
3P目:赤澤。ハングを右にトラバースし、5.7のクラックを直上。このピッチから風が出始める。フリーも交えて、登る。荷揚げをしてみるとむしろレギュラーの時よりも軽い。この後のピッチもそうだった。サラテはレギュラーと違い、壁全体に露出感があり、だだっ広い岩肌にいる感じだ。目の前のエルキャプタンは、まるで壁に張り付いている生き物全てを風化しようとしているかのように聳え立つ。
4P目:赤澤。フィンガーサイズのクラックを登り、クラックが閉じたあたりで左のもう一つのフィンガーへトラバース。フリーでトラバースできそうにないのでテンションをかけてトラバースする。クラックに凹凸が多く、カムだと外れそうなので、ナッツを多用し突破。小便が漏れる寸前であったためスピードがアップした。終了点で右側にする。風が強い。以前のワシントンコラム並だ。コールのやり取りもしづらくなってくる。
5P目:このピッチは極小クラックを直上後、フリーを交えてボルトが何箇所か打ってあるフェース、というかスラブを登る。5.9 A0らしいのだが、ひでさん曰くめっちゃ怖かったらしい。ホールドはあるがスタンスがないらしく、アブミをボルトからギリギリまで離してがんばったみたいだ。途中ボルトにアブミやらゾディアックやらが抜け殻のように残置されていた。相当苦労したようだ。
さて、問題はここからロープ三本だけで地面まで届くかという事だ。ここまでのルート自体の長さは500フィート以上はある。1フィート0.3mなので150m以上だ。今までのビレイ点にfixしながら降りたのでは到底足りないので、3本全てつなげて直接地面まで垂らし、下降しようと試みた。ひでさんが先に降りる、無事降りられたら笛の合図がある。しばらくたち、僕が「はぁ…届かなかったのかなやっぱ。今頃ひでさん登り返してるんだろな。くそー5P目またリードしなきゃなんないのかよ。」と思っていると、地面にひでさんの姿が!おおっ!届いているではないか!笛の合図。僕も下降開始。結び目の通過に苦労するも無事下降し、fix完了。本当にぎりぎりで届いた。カム一個とユマールで固定しておく。これでこのカムとかが盗まれたら、そいつは鬼畜以外の何者でもない。帰りはバスが18:00で終わる為歩くしかない。とその時、車に乗ろうとしている2人の女性を発見。ピッチハイク、OK?と聞くと、すばらしい笑顔でyesと答えてくれた。サンキューベリーマッチ!色々話してみると、この人たちもクライマーで、僕らがハーフドームを登頂する瞬間に上から見ていたことが判明。何たる偶然!確かに左上の方に若い女性がいたような…。ヨセミテビレッジまでは歩くと確実に一時間以上はかかりそうだったが、この天使2人のおかげで助かった。朝から不運の連続で今日は厄日だと思っていたが、この時は、なんと幸運な日だろう!と思った。5ピッチもfixできたし、充実した1日だったぜ!

8月12日
昨日のロープ三本で5ピッチfixという快挙のおかげで明日マンモステラスに行けるのは確実だろう。これで当初の予定を一日短縮した。このまま順調に行けば17日にはTOPOUTだ。5.9オフィズスだけが気がかりである。今日はゆっくり休める最後の日だ。読書したり寝たりして過ごす。この遠征のフィナーレを飾る登攀だ頑張るぞ。