8月7日

8月7日
6:00登攀開始〜13:40 TOPOUT〜14:30 下山開始〜Huppy Islesバスストップ17:40
朝飯のマウンテンハウス。シーフードなんちゃらチャウダー味で美味いスープだ。今日はなんとしてでもヨセミテバレーに帰る。アプローチに一日費やしてしまったため、食料はあとクリフバー2本、スニッカーズ少々だけだ。水は大量に余っている。一時間で2P分ユマーリング。Fixしといてよかった〜。
20P目:赤澤。5.11dのクラックの後、右に振り子。残置のビナがあり助かる。ボルトが一本あるビレイ点へ。
21P目:赤澤。このピッチ。この21P目が全ピッチ中最も苦戦し、最もぶち切れそうになり、最も疲れたピッチであった。Thank God Ledgeという30cmちょいの幅のレッジをおそるおそるトラバースしていく。レッジと壁の間に隙間があり、ここにハンドジャムがばっちし決まる。行けば行くほど幅が狭くなるため、最初は赤ちゃんのはいはいのように、次にジャミングを決めながらトラバースすることになる。ここで最初の問題発生。アブミがクラックのなかにスタックしてしまった。いくら引いても取れない…。とりあえず残置し、回収をフォローのひでさんに託す。僕は予備のアブミを使う羽目に。ちなみに、レッジの後半は怖くてエイドで行っちゃいました。その後、5.8スクイズチムニーへ。落ちることは無いが怖いので僕は「ひでさーん!!マジビレイお願いしまーす!!」と叫んでしまった。それもそのはず、頂上からのんきなハイカーがひでさんに話しかけているのである。僕はこの時ほどアメリカ人を憎んだことはない。お前オレがどんな状況にいるか知ってんのか?!!5分だけヤツと体を入れ替えて、この状況を体感させてやりたかった。そうすれば、もうチムニーをリード中の者をビレイする人に大声で話しかけるという愚行はしないことだろう。
スクイズは普通に突破する。その後一段下がったレッジで支点を作る(思えばこの時一段下がらずに支点を作るべきだった。)。荷揚げ開始。この後最悪な事態となる。まずひでさんが、僕のアブミを回収しようとしたら勢いよく引っこ抜けて(もちろんアブミがね)地上へと落下する。その後、終了点手前の岩と岩の間に荷揚げ用ロープとメインロープの二本がはさまり、メインロープが荷揚げ用ロープに強く押さえつけられる。トラバースな為、途中から僕はひでさんをビレイすることになるが、メインは押さえつけられて引けない。仕方なく、押さえつけられているところよりもひでさん側のメインロープを引き、ATCをセットし、ビレイ。これでいいと思ったら、メインロープがなんかに引っかかってとてつもなく重い…。綱引きをしながらのビレイとなる。ひでさんがトラバースを終わらせスクイズの場所へくると、さらなる問題が発生。どうやらチムニーにホールバックがハマッているらしい…。この後、再びメインロープをfixし、ひでさんはユマーリング。ホールバックの所まで登ると全身全霊の力でチムニーの外に出そうとする。僕も手で上から引っ張る。ダメだ…。最後の手段でひでさんがくそ重いホールバックを背負い、無理やり上げる。ちょっとずつ上げていき、ついにチムニーの外に!!やった!!!やった……………。二人とも疲れ果て、ぶち切れそうになり、このピッチを終えた。この時ほど「もうビックウォールなんかやるか!マジくそくらえだ!!」と思ったことは無い。
22P目:高橋。フェースを少し登った後、ボルトのからボルトへと登っていくようだ。途中振り子も交える。シュリンゲが垂れ下がっているのでフォローは振られる心配は無い。
23P目:高橋。ついに来た。最終ピッチだ。上のハングと壁の間に走るクラックをフリーで左にトラバースしていく。5.7でひでさんは簡単だったらしいが。見てるこっちはヒヤヒヤであった。頂上からはハイカーがこっちを見下ろし、写真を撮っている。つい僕もピースサインをしてしまった。ひでさんから解除のコール!あせらずホールバックを支点からはずし、補助ロープで送る。そして最後のユマーリングへ。徐々に光が強くなっていく。五級の登りを抜けると、眩しい太陽と共に、笑顔のひでさんとハイカー達の姿が目の前に現れた。眩しさに目を細めながら見たその光景は、まるでエルキャプタンの神々が頂上にたどり着く僕を微笑ましく迎え入れてくれているようであった。やった!ついにやったのだ!!ホントに登っちゃったよ!!僕がついた後、登攀具を放り出し、韓国のおばさんに写真を撮ってもらう。ホールバックからガチャガチャと慌しく物を取り出し(ドラ○もんが焦ったときにポケットから秘密道具を大量に出すように)、一番底に入れておいた順天堂大学医学部山岳部の旗を取り出す。そしてパシャ!ほんとに嬉しかった。頑張った甲斐があった。21P目の時の気持ちが嘘のように最高の気分であった。この後外人から6回くらい「コングラチレーション!」と言われながら片付け、下山開始。下りはワイヤーが張ってあるもののかなり傾斜があり怖い。途中死ぬほど辛そうな顔をしているおばさんとかがいた。ワイヤーを下りると、その後は永遠と続くヨセミテバレーへのトレイルを歩く。途中2つのめちゃくちゃでかい滝を通る。ネバダ滝とヴァーナル滝である。超ド級といった感じ。水は捨てたもののやはりホールバックは重い。くづずれも最高潮に達する。休むと痛みが増すので1回だけ休憩し、歩き続ける。途中頂上で写真を撮ってもらった韓国のおばさんに再会し、「you are so fast!!」と言われる。およそ3時間ちょいでやっとハッピーアイルズのバスストップに到着。全身の疲労でふらふらだ。足痛てー!バスでカリービレッジへ。僕はコーラ、ひでさんがバドワイザーで祝杯。ゆっくり片付け、シャワーを浴びる。あぁ…浄化されていく。ベンチで酒と肉とツマミとかを(もちろんサラダも)貪り食う。こんなに上手いビールはアメリカに来て初めてだ。夜10時頃バッパーへ行き、テントに入って寝た。疲れた。
写真:最終ピッチをリードするひでさん