7月29日〜30日ワシントンコラム

7月29日
6:30登攀開始〜8:00 1P目〜9:30 2P目〜11:30 3P目ディナーレッジ〜休憩〜11:50 4P目〜休憩〜14:20登攀開始〜19:30 5P目
朝5:00にノースパイン出発。昨日偵察したアプローチを行く。かなり明瞭な踏み跡だ。
1P目:高橋リード。
2P目:赤澤。傾斜したテラスをトラバースしてから登る。アメリカンエイド初リードなため、戸惑いながらであったが何とか登る。荷揚げをしてみると思った以上に重く、とても足を踏み込むだけでは上がらない。体にユマールをくっつけ、ボディホーリングで上げる。大変だなこりゃ。
3P目:高橋。ひでさんが登り始めてちょっとしてから「うんこする!」と言い出し、途中の小テラスに流動状の物体を残置していった。ディナーレッジという大テラスの到着。整地されており、快適この上ない。休憩後4P目へ。
4P目:赤澤。どうやら上に見えるハングを越えて行くらしい。5.6の階段状を左上後、ハングの真下へ。ハングを越える直前まではボルトがいくつか打ってある。ハングでのアブミは今まで経験したこと無かったのでかなり焦った。アブミに乗ってはひざを曲げレストの体勢をつくり、また反対のアブミに乗ってはひざを曲げ…をくり返し抜け口まで登る。思えばこのときアブミを1本追加し、3本にすればもっと楽に登れたのであろう。抜け口の少し上に横のフィンガークラックが走っているのだがよく見えない。指の感覚でクラックの幅を調べ、カムを選別し、青エイリアンを決めて立ちこむ。怖えー。2つ目の青エイリアンを再び決め立ちこむ。次のカムを選んでいると急に全身に衝撃が走る。どうやら墜落したようだ。2つ目のエイリアンが外れたのである。幸い大きな怪我は無く、左手薬指に打撲を負っただけで済んだ。気を取り直して再びもとの場所へ登る。今度はできるだけカムのセット状況を確認しつつ登る。残置のカムやシュリンゲ、ハーケンなどが4つほどあり、助けを借りる。ひたすら右上した後、小ハングからその上のビレイ点まで。アブミでのトラバースも経験したことが無かったのでいい練習になった。メインロープをfixし、荷揚げシステムをセット。ひでさんがユマーリングし、僕が荷揚げを開始。ここまでで、このピッチは2時間ちょいかかってしまった。ここでアクシデント発生。ビレイ点の下のハングの抜け口にホールバックが引っかかってしまった。くそ!!一度ロープにテンションがかかってしまうと緩めることは困難なため、なんとかホールバックを無理やりはずすしかない。フォローで登ってきたひでさんの大奮闘のおかげでやっとホールバックを回収。疲れたー!後ろから外人パーティーが来ているため、またこのアクシデントで登攀具がゴチャゴチャになってしまったため、fixをディナーレッジに垂らして下降。一度体勢を立て直す。休憩後空中ユマーリングし、4P目終了点へ。空中ユマーリングは、ザイル1本でしかつながっていない感じが怖い。しかも風が強いのでクルクル回転して酔う。やっとの思いで到着。
5P目:高橋。振り子トラバースがあるピッチ。リングがあったのでこれを支点に振り子。トラバースな為フォローは怖い。一つのプロテクションを回収すると次のプロテクションの真下まで振られることになる。プロテクション間の距離はひでさんが短めにしてくれたので大丈夫であったが、問題は振り子トラバースするとこである。今回は本に書いてあったことを実践し、自分の8の字結びの余剰分を伸ばし、それを使ってロワーダウンする方法を用いた。ただこの方法は振り子をするピッチの前にフォローは8の字を結びなおし、余剰分を作らなければならないのが面倒だし、タイムロスとなる。でも安全には代えられない。(もっといい方法を後でひでさんが発案→終了点にリードが着き、メインロープをある程度リードが引く。フォローは余剰分を残し、途中で8の字を作って管付きカラビナでレッグループにかける。元の8の字は解く。リードはフォローに、何Mくらい振られるかをコールし、フォローはそれに合わせてロープを残すよう心がける。)もうすぐ日没なのでディナーレッジまでラッペルし、今日はここで泊まることにする。明日の朝10:00にテン場を出なければならないので明日は登らずにすぐ下降する予定。シュラフもあるので快適に寝れた。下界の明かりが綺麗だ。

7月30日
6:30起床〜ラッペル開始〜8:40 North Pine camp ground着
3P目と1P目のラッペルでロープがスタック。ユマールで登り返したりして相当苦労した。今回のワシントンコラム、サウスフェースで色々練習になった。一番怖いのはやはり荷揚げやラッペル時に、荷物やロープがスタックすることである。今回は、荷揚げ中に一回。ビレイ中にロープが垂れて一回。ラッペル後のロープ回収時に一回。合計三回スタックした…。常に注意しなければならないことを思い知らされた。
今日日本人の2人のクライマーに会う。1人は成海さんという、アイスクライミングでは優勝もしているすごいクライマーだった。2人とも24歳北海道出身らしく、かの有名な伊藤さん(僕は知らなかった)とも知り合いらしく、伊藤さんと登ったことのある浅井さんは驚き、色々話していた。この人達によると、ヨセミテにずっと滞在するにはバッパーに寝るときだけ幕営し、それ以外は荷物を隠してどっかに居るとか、森の中に隠れて寝るとかするしかないらしい。また、何回か注意されるとムショ行きらしい…。バッパーは他のキャンプ場と違い、自分でカードに名前を書きそれをテントに付けるというセルフサービス的テン場である。レンジャーのチェックも他の場所より緩い。これからは合法的にはヨセミテに滞在できない。もはやバッパーに隠れながら暮らすしかない。とりあえず今日、明日はレストだ。面倒を見てくれたデービットとは明日でお別れだ。デービットは本当に役立つ情報を教えてくれた。サンキューベリーマッチである。この人はテン場のフードボックスを一つ一つチェックし、置き忘れてあったクラッカーや衣類などを頂戴していた。相当手馴れている…。コンピューター関係の仕事に勤めていて、同僚に嫌がられつつも1年の休暇を得て、いろんな所へ一人旅をしているらしい。前歯が抜けているのと、突発的に爆笑するトコがいい感じのおっさんであった。浅井さんは今日ヒッチハイクヨセミテ以外の場所へ行き、しばらくの間トレッキングして来るようだ。その後はトゥオラミメドウズへパートナーを探しに行く予定らしい。デービットと成海さんたち、そして浅井さんのおかげで僕らの生活もやっと落ち着きそうだ。デービットからの情報を浅井さんが訳して教えてくれ、成海さんたちの情報も役立った。これからは、バッパーにずっと泊まる。朝テントをしまい、荷物は近くの岩陰に隠すかフードボックスに入れておく。壁に取り付くときはカリービレッジにある大きめのフードボックスに荷物を入れ、カギをかける。このような戦法でいく。ちなみにさっきレンジャーが来て便所に隠れた。明日はゆっくり休もう。10.5mのメインザイルの芯がやられてしまったので明日1本買う予定。2人だけになってしまい少し寂しいが頑張っていこう。