8月2日〜5日

8月2日
いやーよく寝た。朝飯を食べ、バッパーを去る。へへっ!レンジャーめ、出し抜いてやったぞ!カリービレッジへ向かい荷物の整理。ビレッジストアーで買い物をし、ヨセミテロッジの無料のコーヒーを飲みながら休憩。ふー、落ち着く。夕方ストアーへ、明日からの食料と水を買いに行く。水は後半悪くなりそうなので買っておくのだ。4ガロン(1ガロン=約4L)購入。容器も使えそう。あとマウンテンハウスというお湯でできる乾燥食品とクリフバーというチョコバーみたいなやつも買う。水は登攀開始時に29L持つ予定である。ハーフドーム基部に湧いている時もあるらしいので、それを考慮し全部は持っていかない。基部に水がない場合は一度戻って水を上げる予定だ。

8月3日
10:40バスストップ〜19:30 Half Dome基部
ついにハーフドームにチャレンジするときがきた。今日の予定としてはアプローチし、できれば3Pfixを張りたい。アプローチの方法としては2つあり、ハッピーアイルズからリトルヨセミテの方へひたすら歩き、ハーフドームを回り込んでいく方法と、ミラーレイクまで歩き、そこから直接基部まで上がる方法がある。前者は技術的には簡単だが、というかただ歩くだけなのだがとにかく遠い。他人の記録を見るとみんな8時間くらいかかっている。後者は途中4級の登りやガレ場などが続くが3時間ほどでアプローチできるらしい。僕らは後者の方法を選んだ。前述したように水は全ては持っていかない。それにしたって重い…。30キロ弱はあるのだろうか。途中交代でホールバックを背負うことにする。17番のバスストップから歩き始める。30分くらいでミラーレイクと思われる沼が現れる。基部への踏み跡はミラーレイクの手前から右に入るらしい。よくわからずとりあえず右に入り、ひたすら斜面を上がるとスラブ壁に着く。トポにもそう書いてあるので合っていると思った。この後4級の登りがあるのだが、どこを探してもそんな場所はない。散々探した挙句、斜めに走るクラックというより割れ目を登ることにした。ハーネスとロープを着ける。ひでさんがリードで登るが苦戦している。そらあれだけの荷物を背負っていればつらいだろう。フォローで僕がホールバックを背負い登る。肩がもげそうになりながらいくが、非常にしょっぱい。絶対4級以上あるだろこれ!その後もアプローチの時点だというのに登攀が続きどでかい壁の前に出るがこれはハーフドームにしては形がおかしい。その奥に見える岩陰がそうだろう。ルンゼを詰めていくようである。上にfixロープが見えた。登っていくと途端に難しくなり、4級どころではなくなる。いや、むしろ5.8はあるリッジを登っている。ひでさんは登り過ぎて、降りるに降りられなくなりノーザイルで突破した!この時ばかりは僕は下のほうで「落ちないでくれ…!!」と祈っていた。無事登りきり、支点を作ってもらい僕はフォローで登る。重い、重すぎる。ようやくfixロープのあるところまで登るがここから上は到底荷物を背負って登れるようなところではなかった。ひでさんが空身でリードし、荷揚げしつつ登る。ようやくルンゼを詰め終えると右奥にとてつもなくでかい壁が見えた。あれか…。ていうか全然方向違うじゃん!やはりアプローチを間違えたみたいだ。ひたすらトラバースし近づく。途中だだっ広いナメの上をトラバースするところがあり怖かった。一度滑ったら下まで落ちていきそうだ。ようやく正規のアプローチルートに合流し、脆いガリーを登っていく。しかし脆い…。黒板のチョークの山の上をのぼっているようだ全身粉まみれになりついに基部に到着。レギュラーの取り付きはさらにトラバースしなければならないのだが日没が近づいているため今日はここでビバーク。しかしつらいアプローチだった。すでに全身ボロボロで疲れ果てた。レギュラー取り付きからは人の声がする。どうやら先行パーティーがいるようだ。アプローチの時点でこれじゃ、本当に登れるのかな。不安要素盛りだくさんで初日の夜は過ぎていった。

8月4日
6:30起床
レギュラー取り付きへトラバースし、ついに到着。イタリア人パーティーが荷揚げとユマーリング中だ。ひでさんが泉は涌いているかと聞くと、そこだよ、と教えてくれた。おぉー!!湧いているではないか!こんこんと湧き出ておる!!助かった。これでまた戻らなくて済む。汚れまくった顔と手を洗い、水を汲む。それにしてもハーフドームはでかい。でかすぎて何がなんだか分からん。これを登るのか…。今更引き返すことはできない。こうなったらやるしかない。イタリア人パーティーは四人で、めちゃくちゃ遅い登りだ。今日中に6P目のスローピングビヴィに行くことはムリだと判断し、3ピッチfixしてその後はレストした。
1P目:高橋。ロープぎりぎりで終了点へ。僕はユマーリングしながら、ついにハーフドームを登り始めたのだと実感。
2P目:高橋。
3P目:赤澤。たくさん練習したから大丈夫だと言い聞かせてリードしていく。フリーで登れる箇所もあり無事リード。Fixして基部までラッペル
この日の登攀は終了。基部には快適な平地が何箇所かありゆっくり休めた。焚き火をしたりして暇つぶし。途中一瞬スコールが来たがすぐやんだ。爆睡する。

8月5日
6:00登攀開始〜19:30 11P目
朝起きるというより、ひでさんに起こしてもらう。マウンテンハウスを食べて準備し、ユマーリング開始。1P目は荷揚げ用ロープが無いため荷物は自分たちで背負うしかない。このくそ重いザックをしょってのユマーリングは非常に辛かった。ひでさんはさらに重いホールバックに苦しんでいた。2P目からは荷揚げをする。最初足で踏み込んで体重をかけてみるが全く上がらない。仕方なく、レッグループに直接ユマールをくっつけ、ボディホーリングでちょっとずつ引き上げる。まるでピストン運動である。しかし重い。ただでさえ重いのにロープと荷物が岩に擦れてさらに重くなっているのだ。こんなことを一日続けていたら腰椎ヘルニアになるのではないかというほど、腰への負担が大きい。二時間で3P分ユマーリングし、実質の登攀へ移行。
4P目:赤澤。特に難しい箇所は無く、フリーで抜けられるところも多かった。
5P目:赤澤。3級の登りからフィンガークラックを行く。この頃はまだナッツに慣れていなかったため、極小のキャメロットやエイリアンで奮闘しながら登っていた。途中青エイリアンが抜けなくなりヒヤッとしたが、ナッツキーを使って何とか回収できた。傾斜が緩く荷揚げは辛い。2P続けるのが限界だ。
6P目:高橋。本人曰く簡単らしい。スローピングビヴィに到着。今日は11P目に泊まる予定なのでここは通過。
7P目:高橋。ここから右側の壁を登っていく。フォローの僕が、ホールバックが引っかからないようにしながらひでさんが荷揚げ。順調。
8P目:赤澤:迷いやすいピッチらしいがイタリア人に追いついたためその心配は無かった。ほとんどフリーで行けた。フリーで登れるとやはり時間の節約になる。それだけエイドが遅いってことだ。イタリア人とビレイ点のピナクルを共有し、荷揚げ。腰が砕けそうだ。
9P目:赤澤:レッジを右にトラバース後、2,3段上がるだけの簡単なピッチ。荷揚げの際にホールバックが振られるのを防ぐため、補助ロープを使って徐々に送り出す。ロープがスタックするが何とか回収。ワシントンコラムの二の舞にだけはなりたくない。
10P目:赤澤:ボルトラダーから右のレッジへ振り子トラバース。残置のカラビナを使い、テンションをかけ、勢いをつけて右のガバをつかむ。2,3回振り子した後成功。結構面白かった。ここでも補助ロープを使ってホールバックを操作。イタリア人はどうやら敗退するようだ。そりゃこんな遅いんじゃ無理もないだろう。おかげで僕らは11P目のビヴィ(ビバークポイント)を独占できそうだ。
11P目:右へフェースのトラバースをしてから登るようだ。またまた補助ロープ使用。こんなもの本当に使うのか?と思っていたが、大活躍だ!今後も何回も使うことになる。
今日のビヴィに到着。横になるなら2人が限界といった感じのレッジだ。でこぼこしていて、背中が痛いが文句は言えない。α米食って就寝。夜はとても寒く、シュラフの口を最大まで閉めても寒い。時々起きながらも体力回復させる。星がきれいだ。